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聞かれていることに答える。
当たり前のことのようだが、これが案外難しい。
もちろん、何を聞かれているのか分からない時もある。あえて別の角度から話をすることもある。けれど、一番多いのは別の理由かもしれない。
自分の中にある「こうあるべき」という観念。
あるいは、自分を守りたいという気持ち。
そんなものが先に立つと、相手の質問よりも、自分の言いたいことの方が前に出てしまう。
「できますか?」
と聞かれているのに、
「いや、でも事情があって…」
と答えてしまう。
「どう思いますか?」
と聞かれているのに、
「実はあの時は…」
と説明を始めてしまう。
相手が求めているのは、まず答えなのに。
もちろん、背景や事情も大切だ。誤解を解きたい気持ちも分かる。私自身、そういう場面は少なくない。
しかし、聞かれていることに答えずに説明だけを重ねると、会話は少しずつずれていく。
そして話はこじれる。
社員との面談でも、家族との会話でも、お客様との打ち合わせでも同じだ。
まずは聞かれていることに答える。
説明はその後でいい。
最近、そんな当たり前のことを改めて意識している。
歳を重ねると、知識も経験も増える。けれど、その分だけ自分の考えに固執する危険も増えるのかもしれない。
だからこそ、ときどき立ち止まって確認したい。
私は今、相手の問いに答えているだろうか。
それとも、自分を守ることに夢中になっているだろうか。
会話が噛み合うかどうかは、案外そんな小さなところで決まるのだと思う。