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朝から息子が落ち着かない様子だ。今日は英検準一級の試験日である。
これまで、キッチンタイマーで時間を測りながら机に向かう姿を何度も見てきた。問題集を開き、単語を覚え、英作文を書いては見直す。その積み重ねの先にあるのが今日なのだろう。
私は試験会場までの送迎を頼まれた。
車に乗り込んだ息子は、何やらびっしり書き込まれたノートを見返している。聞けば英作文についてまとめたものだという。
英作文にはポイントがあるらしい。
①主張が明確であること
②理由が二つあること
③最後に主張を別の言い方で結論づけること
なるほどと思った。
特に私が気に入ったのは「理由が二つあること」だった。
一つだけではなく、もう一つ。
そういえば私は映画や小説でも、そういう仕掛けが好きだ。
何気ないセリフに別の意味が隠れていたり、登場人物の行動に実はもう一つの意図があったりする。初めて見た時には気づかないのだが、後になって「ああ、そういうことだったのか」と分かった瞬間、思わずニヤッとしてしまう。
人の言葉も同じかもしれない。
厳しい言葉の奥に優しさがあったり、ぶっきらぼうな態度の裏に照れくささがあったりする。
物事には、一つだけではなく、もう一つの理由が隠れていることがある。
理由が一つしか見えない時は、もう一つ探してみる。
そんな見方ができると、世の中は少しだけ面白くなるのかもしれない。
服装は自由なのに、なぜか制服で試験会場へ向かった息子。
理由は分からない。
けれど、その姿を見て「ああ、本気なんだな」と思った。
英作文の理由は二つ必要らしいが、この制服の理由は一つで十分だったような気がする。