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2026/03/21
852/1000 偉いという鎧   

人生で一番怖いのは、「偉くなること」なのかもしれない。

人は本来、それぞれが尊い存在だ。

だから本当は、誰かより偉くなる必要などないのだと思う。

けれど立場が上がると、「偉さ」というものが静かにまとわりついてくる。

すると不思議なことに、自由に動けなくなる。

弱音を吐きにくくなる。

間違いを認めにくくなる。

人の気持ちに鈍感になる。

そして、人への要求だけが高くなっていく。

それは本当に良いことなのだろうか、と時々立ち止まって考える。

偉さとは、案外、自分をがんじがらめにする鎧のようなものかもしれない。

そんなことを思い出すたび、昔、師匠がよく口にしていた言葉が浮かぶ。

「先生と言われるほど、バカではない」

当時は少し照れ隠しのようにも聞こえたが、今なら分かる気がする。

「先生」と呼ばれる場所に安住しないという覚悟の言葉だったのだろう。

人からそう呼ばれた瞬間に、学ぶ側から教える側へと立場が固定されてしまう。

すると、問い続けることが難しくなる。

けれど本当に大切なのは、学び続ける側に立ち続けることではないか。

偉いと言われることよりも、昨日より少しだけ分かるようになること。

人の話をちゃんと聞けること。

分からないと言えること。

その方がずっと自然で、ずっと自由だ。

だから私は思う。

偉いという鎧など、まず捨て去ろう。

軽くなった分だけ、人に近づける。

そして少しだけ、自分にも正直になれるのだ。

2026/03/19
850/1000 ゴミは偉いのだ   

ゴミというものは、いっしょくたに語られがちだが、実にいろいろなことを教えてくれる。

この時期は、鼻をかんだティッシュが多い。花粉の季節だとわかる。

そして今は、引越しゴミのピークでもある。

 

卒業式も終わったのだろう。

山形大学の学生らしい若者たちが、次々とゴミを持ち込んでくる。

使い込まれた家電や、少しだけくたびれた家具。

数年分の暮らしが、軽トラックの荷台に積まれている。

 

終わりと始まりが、同時にやってくる季節だ。

 

では、もうすぐやってくる運動会の季節は、何が教えてくれるのか。

 

それは、湿布のセロファンだ。

 

子どもは貼らないだろうから、にわかに頑張ったお父さんの姿が思い浮かぶ。

普段は走らないのに、リレーではつい本気になってしまう。

翌朝、足に違和感を覚えながら、苦笑いで湿布を貼る。

 

その証拠が、ゴミ袋の中にそっと残る。

 

学生たちの引越しゴミが「別れ」を運び、

湿布のセロファンが「奮闘」を伝える。

 

どちらも、ほんの一瞬の出来事なのに、

ゴミはそれをきちんと受け止めている。

 

誰にも気づかれないかもしれないが、

確かにそこには、人の暮らしがある。

 

そんな季節が、またやってくる。

 

ゴミは偉いのだ。


2026/03/17
848/1000 賛成の反対なのだ   

人生というのは、なかなか面白い。

先日、妻がふと

「なんか当たる気がするんだよね」

と言い出して、人生で初めて宝くじを買ってみた。バレンタインジャンボ。

 

正直、ほとんど期待はしていなかった。

 

ところが昨日、結果が発表されて、何気なく確認してみると——

3等、五万円。

 

思わず二度見した。

ありがたいな、と素直に思う。

 

…と、ここまではよかったのだけれど。

 

同じ日、もう一つの知らせが入る。

娘がインフルエンザB型。

 

友人と楽しみにしていた卒業旅行。

それが、まさかの延期(キャンセル手続きの嵐)。

 

五万円の当たりと、旅行の延期。

こういう時に思い出す言葉がある。

 

禍福は糾える縄の如し。

そして人間万事塞翁が馬。

 

良いか悪いかは、今はまだ分からない。

どちらも、途中の出来事だ。

 

裏も表も、全部ひっくるめて人生。

 

私には

「賛成の反対なのだ。」

という、バカボンのパパの名言がしっくりくる。


2026/03/15
846/1000 季節が変わる頃、クローゼットにも風を通す   

昨日は久しぶりにお墓参りに行ってきた。

以前は月に一度は行くようにしていたのだが、昨年、庄内でも熊の出没が話題になってからというもの、つい足が遠のいてしまっていた。

もし出くわしたらどうしよう。

そんな理由をつけて、気がつけば半年も経っていた。

久しぶりのお墓は、特に変わった様子もなく、静かにそこにあった。

花を供え、手を合わせる。

たいしたことはしていないのに、不思議と心が少し整う。

やっぱり、こういう時間は大切なのだと思う。

その足で、クローゼットの整理もしてみた。

季節の変わり目ということもあり、薄手のコートやレザーバッグなど、最近出番の少なくなったものをまとめてリユースショップへ持ち込んだ。

結果は、およそ二万円。

思ったよりいい値段がついた。クローゼットの中もすっきりして、ちょっとしたお小遣いまで生まれるのだから悪くない。

季節の変わり目にリユースショップを活用するのは、なかなか良い方法だと思う。

減らした分、新しいアイテムとも出会える。ということで、吟味に吟味して、新しいブリーフケースを買うことにした。

物は増やすだけでは、暮らしは重くなる。

ときどき減らして、風を通す。

そうすると、不思議と次の出会いも入ってくる。

半年ぶりのお墓参りと、クローゼットの整理。

やったことはどちらも「少し整える」ということなのかもしれない。

春は、そんな小さな入れ替えをするには、ちょうどいい季節だ。

2026/03/13
843/1000 整うとは、認知することかもしれない   

人は歳を重ねると丸くなる、と言う。

自分はどうだろうかと考えてみる。

プライドがなくなったかというと、きっとそんなことはない。

量は昔と同じなのだと思う。

 

ただ、扱い方が少し変わった気はしている。

 

昔は小さな鍋で煮ていたから、

すぐに煮立ってしまった。

 

今は少し大きな鍋になったのかもしれない。

それともローリエを一枚入れて、臭みを取る調理法を覚えたのか。

 

どちらにしても、

少し扱いやすくなった気はしている。

 

対人関係の中で、

自分の小さなプライドに気づくことがある。

 

特に、自分がどこかで下に見ていた人から

指摘されたときだ。

 

その瞬間、心の中で反発が生まれる。

 

「そんなこと言われる筋合いはない」

 

そんな気持ちが一瞬よぎる。

 

でも同時に、

「ああ、今いいカッコしようとしたな」

「いらないプライドだな」

 

そう気づく自分もいる。

 

プライドそのものは、きっとなくならない。

ただ、それを認知できるかどうか。

 

それが大事なのだと思う。

 

気づけば、少し修正できる。

気づかなければ、そのまま反応してしまう。

 

整理の仕事をしていると、

整えるとは、物を減らすことだと思われがちだ。

 

しかし本当は違う。

 

まずは

 

そこにあることに気づくこと。

 

そこから整えることが始まる。

 

人の心も、

案外同じなのかもしれない。

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