総合案内 | 0235-24-1048 |
---|
ゴミ受付 | 0235-25-0801 |
---|
窓口 | 8:30〜11:45/13:00〜16:30 |
---|---|
電話対応 | 8:00〜12:00/13:00〜17:00 |
定休日 | 日・祝・土曜不定休・年末年始 |
高校一年の息子が、夏休みに突入した。
部活とスマホ三昧の日々に、学校からひとつだけ渡されたミッション——読書感想文。
しかも「新潮文庫の100冊から1冊選んで書け」という条件付きだ。
普段、本なんてまるで読まない息子。
まずやったのが、iPadに「何読めばいい?」と聞くこと。
令和の読書はAI頼みか、と苦笑いしつつも、ちょっと懐かしくなって私も100冊のラインナップを見てみた。
あった、あった。「車輪の下」「坊っちゃん」「罪と罰」……
あの頃と変わらぬ顔ぶれもいれば、「博士の愛した数式」「ツナグ」なんて、時代を感じる新顔たちも並んでいた。
悩む息子を前に、私が“初めての純文学”として選んだのは、夏目漱石の「こころ」。
高校生が読むには、やっぱりこれだろう。
あの独特の重たさ。静かに沈んでいくような読後感。
「なんかモヤモヤするんだけど…」と彼が言ってくれたら、父としては満点なのだ。
意気揚々と本屋に行くと——「こころ」、まさかの品切れ。
この国に「こころ」がないなんて、と少しばかりセンチメンタルになる父。
それでも手ぶらでは帰れない。
次なる選択肢として手に取ったのは、三島由紀夫の「金閣寺」。
ちょっとハードル高いか?と一瞬迷ったけれど、
美と破壊と、言葉の強度。
感情が揺さぶられる読書体験なら、きっとこれもまた“入口”になる。
そう信じて帰宅し、本を差し出した瞬間、息子が一言。
「わぁ、つまらなそう!」
……心、折れるかと思った。
いやいや、グッと堪えて思いなおす。
いつか彼はきっとわかるはずだ。
この装丁の重み、三島の文体の鋭さ、そして人間の内面の奥深さ。
「これを選んだお前のセンス、最高じゃん」と未来の誰かが褒めてくれる日が来る。
そんな小さな期待をこめて、父は今日も黙って見守るのである。