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747/1000 心のアンテナを立てる 

2025/12/04
747/1000 心のアンテナを立てる 

「ありがとう」の反対は「あたりまえ」。

よく耳にする言葉だけれど、先日ラジオを聴いていて、その意味を深く感じた。

投稿者の男性が、少し苦笑いを混じえながら話していた。

「毎朝、コピー機に紙を補充するんですが、誰もやらないんですよ。新人も入ってきているのに、ずっと自分だけで……正直モヤモヤしてます」

この気持ち、よくわかる。

誰がやってもいい仕事。けれど、誰かがやらないと回らない仕事。

下っ端だから、という理由ならまだ整理がつく。

でも、そういうわけでもないのに“なぜ自分だけ?”という思いが積もってゆく。

しかも、これは給与が少ないとか待遇がどうとか、

そんな表面的な話ではない。

彼が本当に腹を立てていたのは、

「やってくれて当たり前」とされる空気だったのだ。

人間というのは可愛いもので、

たった一言の「ありがとう」があれば、同じ行動がまったく違う意味を持つ。

紙を補充するだけの行為が、

その一言で“気遣い”になり、“ヒーローみたいな働き”にもなる。

これは職場に限らず、家庭でも、地域でも、どんな場所でも同じだろう。

必要なのは “アンテナ” だ。

相手の行動を、あたりまえとしないための、ささやかな心のセンサー。

アンテナが鈍れば、日々の優しさや手間に気づけない。

でも、ちゃんと立っていれば、

誰かのひと手間に「ありがとう」が自然と生まれる。

そして不思議なもので、

こうして見ていくと、「ありがとう」と言われる行動そのものより、

その一言を口にできる人のほうが、どこか尊いように思えてくる。

行動はただの出来事。

けれど「ありがとう」と言える人は、

その裏にある気持ちや手間をきちんと受け取っている。

結局、人の価値を決めるのは、

どんな行動をしているかだけではなく、

どんな心で受け取り、どんな言葉を返せるか――

そこなのだと思う。
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