29/100 音楽と時計と、人間の熱
2026/09/29YouTubeで話題になった楽曲について、「AIで作られた作品ではないか」という議論が起きている。私も聴いてみたが、まず曲そのものがいいと思った。だからこそ、誰が、どうやって作ったのかが気になるのだろう。
この話を見て、時計の「クォーツショック」を思い出した。正確で手頃なクォーツ時計が普及しても、機械式時計は消えなかった。私自身、機械式時計派だ。時刻を知るだけなら、もっと正確で便利な方法はいくらでもある。それでも、小さな歯車が動き続ける時計を腕に着けていたい。
そこに人間の熱のようなものを、たとえ幻想だったとしても、求めたくなるのだ。
音楽にも似たことが起きるのだろうか。AIによって、整った曲を作ることがずっと身近になる。聴いて心地よい曲が増えるのは面白い。一方で、好きなアーティストの新曲を待つ気持ちは、音の出来だけでは説明できない。その人が何を見て、何に悩み、どんな言葉を選んだのか。そんなことまで想像しながら聴いている。
もちろん、人間が苦労して作ったというだけで、よい作品になるわけではない。AIで作られた曲にも心を動かされるかもしれない。それでも制作の背景を知りたくなるのは、私が作品の向こうに人を感じたいからなのだろう。
安くて高性能なものが増えていく時代に、人は何に価値を感じるのか。機械式時計を眺めながら、しばらく考えてみたくなった。

