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末の娘が東京に卒業旅行に出かけた。
この日のためにできる限りのおしゃれを探し、早起きして丁寧にメイクをしての出発だった。
冗談半分で「芸能界にスカウトされるんじゃないか」などとひやかして見送った。
持って行ったのは、私のスーツケースだ。もう買ってから10年以上になる。当時はずいぶん吟味して選んだ記憶がある。その甲斐あって、とにかく壊れない。家族だけでなく、親戚の旅行にまで同行するようになり、すっかり我が家の旅の相棒になった。
仕事柄、処分されるスーツケースを目にすることが多い。まだ新しいのに壊れてしまったものも少なくない。そのたびに、長く使えるものを選ぶことの大切さを教えられてきた気がする。
スーツケースは少しボロボロくらいが、どこか猛者感があっていい。角の擦れや車輪の傷には、これまでの旅の時間が刻まれているように見える。
そのスーツケースが今、末の娘と東京を歩いている。旅の思い出をたくさん詰め込んで帰ってきてほしい。
昨日放映された「ルックバック」を観た。友人から「観るといいよ」とLINEが入り、息子に聞くと『チェンソーマンの作者だよ』と教えてくれた。
秋田県出身で、山形市の東北芸術工科大学の卒業生ということもあり、どこか身近な誇らしさを感じながら観始めたのだが、気がつけば静かに胸の奥を揺さぶられていた。
劇中に描かれる風景にも、どこか東北の空気のような落ち着きが感じられ、それもまた心に残った。
観終わったあと、ふと思った。きっとこの作品は、観た人それぞれの中にいる「藤野」と「京本」を思い出させる物語なのだろうと。友人かもしれないし、先生かもしれない。あるいは仕事の仲間かもしれない。違いを認め合いながら互いの中に住み続ける存在は、誰の人生にもきっといるのだと思う。
私にとっては父だった。
反発もしたし、距離を取りたいと思ったこともあった。それでも気がつけば判断の基準のどこかに父がいる。違う道を選んだつもりでも、その選択の根には確かに父の影響がある。経営の方向を変えようとしたときでさえ、父と向き合う時間でもあったのだと今なら分かる。離れたようでいて、離れきれない関係。それはきっと、友情とも師弟とも違う、もっと深い「一心」の関係なのだと思う。
この作品は、そんな自分の中に生き続けている大切な誰かを、静かに思い出させてくれる素敵な物語だった。ぜひ多くの人に観てほしいと思う。
人生で一番怖いのは、「偉くなること」なのかもしれない。
人は本来、それぞれが尊い存在だ。
だから本当は、誰かより偉くなる必要などないのだと思う。
けれど立場が上がると、「偉さ」というものが静かにまとわりついてくる。
すると不思議なことに、自由に動けなくなる。
弱音を吐きにくくなる。
間違いを認めにくくなる。
人の気持ちに鈍感になる。
そして、人への要求だけが高くなっていく。
それは本当に良いことなのだろうか、と時々立ち止まって考える。
偉さとは、案外、自分をがんじがらめにする鎧のようなものかもしれない。
そんなことを思い出すたび、昔、師匠がよく口にしていた言葉が浮かぶ。
「先生と言われるほど、バカではない」
当時は少し照れ隠しのようにも聞こえたが、今なら分かる気がする。
「先生」と呼ばれる場所に安住しないという覚悟の言葉だったのだろう。
人からそう呼ばれた瞬間に、学ぶ側から教える側へと立場が固定されてしまう。
すると、問い続けることが難しくなる。
けれど本当に大切なのは、学び続ける側に立ち続けることではないか。
偉いと言われることよりも、昨日より少しだけ分かるようになること。
人の話をちゃんと聞けること。
分からないと言えること。
その方がずっと自然で、ずっと自由だ。
だから私は思う。
偉いという鎧など、まず捨て去ろう。
軽くなった分だけ、人に近づける。
そして少しだけ、自分にも正直になれるのだ。
ゴミというものは、いっしょくたに語られがちだが、実にいろいろなことを教えてくれる。
この時期は、鼻をかんだティッシュが多い。花粉の季節だとわかる。
そして今は、引越しゴミのピークでもある。
卒業式も終わったのだろう。
山形大学の学生らしい若者たちが、次々とゴミを持ち込んでくる。
使い込まれた家電や、少しだけくたびれた家具。
数年分の暮らしが、軽トラックの荷台に積まれている。
終わりと始まりが、同時にやってくる季節だ。
では、もうすぐやってくる運動会の季節は、何が教えてくれるのか。
それは、湿布のセロファンだ。
子どもは貼らないだろうから、にわかに頑張ったお父さんの姿が思い浮かぶ。
普段は走らないのに、リレーではつい本気になってしまう。
翌朝、足に違和感を覚えながら、苦笑いで湿布を貼る。
その証拠が、ゴミ袋の中にそっと残る。
学生たちの引越しゴミが「別れ」を運び、
湿布のセロファンが「奮闘」を伝える。
どちらも、ほんの一瞬の出来事なのに、
ゴミはそれをきちんと受け止めている。
誰にも気づかれないかもしれないが、
確かにそこには、人の暮らしがある。
そんな季節が、またやってくる。
ゴミは偉いのだ。
人生というのは、なかなか面白い。
先日、妻がふと
「なんか当たる気がするんだよね」
と言い出して、人生で初めて宝くじを買ってみた。バレンタインジャンボ。
正直、ほとんど期待はしていなかった。
ところが昨日、結果が発表されて、何気なく確認してみると——
3等、五万円。
思わず二度見した。
ありがたいな、と素直に思う。
…と、ここまではよかったのだけれど。
同じ日、もう一つの知らせが入る。
娘がインフルエンザB型。
友人と楽しみにしていた卒業旅行。
それが、まさかの延期(キャンセル手続きの嵐)。
五万円の当たりと、旅行の延期。
こういう時に思い出す言葉がある。
禍福は糾える縄の如し。
そして人間万事塞翁が馬。
良いか悪いかは、今はまだ分からない。
どちらも、途中の出来事だ。
裏も表も、全部ひっくるめて人生。
私には
「賛成の反対なのだ。」
という、バカボンのパパの名言がしっくりくる。
880/1000 リサイクル家電は、直接お持ち込みいただくのがいちばんです
テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン。いわゆるリサイクル家電は、「家電リサイクル法」という仕組みによって処分方法が